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クロマグロの漁獲規制について考えてみる

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06 /27 2018
普段は自分の趣味で日本酒の紹介をしている当ブログですが、今回は実に個人的な関心からクロマグロの規制に関する内容です。
日本酒は全く関係ないので興味の無い方はブラウザバックを…
しかしながら、一人でも多くの方に知ってほしい内容なので、是非日本酒好きな方に見ていってもらいたいです!






去る6月25日、7月からクロマグロの漁獲に関する規制が強化されることを受け、全国から沿岸鮪漁業者が集まり、東京でデモが行われました。
いろんなメディアで報道されていましたが…今回の報道、僕は納得できません!
なので!漁業者の主張、そして今回の規制の問題点を自分なりにまとめてみる事にしました。
魚や漁業に詳しくない方にもできるだけわかりやすいように頑張って書きました。
少々長いですが、よろしければお付き合いください。



まず、軽く検索して見つけられる新聞記事はこちら。

「枠増やせ」漁業者が行進 クロマグロ漁獲規制で(朝日新聞)
マグロ規制 漁業者がデモ 農水省前で500人(毎日新聞)
クロマグロの漁獲規制強化に漁業者反発、見直し延期・支援要望(産経新聞)
※朝日新聞の記事に関しては見出し、さらには記事の内容が掲載当初から修正されていますが、なんとなくムカつくので上では掲載当初の見出しです。


新聞社ごとにちょっとした違いはあれど、内容はおおむね「漁師が枠の拡大や休業中の補償を求めている」と言えるものだろう。
この記事に関するネット上での反応を調べてみたが「今まで獲ってきたのだから自業自得」「獲り尽すまで気付かない漁師はバカ」「いままでと違って贅沢三昧できないだけでしょ?」といった意見が多く見受けられた。

確かにこれらの記事や日ごろの報道を見る限りでは、こういった意見を持つのも仕方ないことだろう。
しかしながら実態は記事の内容とは大きく異なるのである。

以前前説でこの規制に関して触れた際にも書いたことだが、僕自身は巻網漁そのものを否定するつもりは一切無い。
この先の文章では否定的な面が目立つかもしれないが、僕は巻網も日本国において大事な漁業形態の一つであると考えている。
そのことを踏まえた上で、読んでいただけると幸いである。



IMG_1553 (2)
6月25日のデモの様子




1.そもそもどんな人たちがデモをしていたの?

このデモに参加していた人間の多くは、沿岸で鮪類を中心とした漁業を営んでいる漁師であった。
北は北海道、南は沖縄県石垣島まで、全国各地から5~600人ほどが集まった。
彼らが生業としているのは、一本釣りや延縄漁、定置網漁といった比較的小規模で高品質な魚を漁獲できる漁法である。
一回の漁あたりの漁獲量も限られており、個人事業者が多いのも特徴である。
彼らの多くが「海を守る」という共通の理念を持ち、規制そのものには賛同していた。
産卵期には自主禁漁という形で資源保護を考えた漁をしている者も多い。
今回のデモには鮪漁師のみならず「同じ浜で仕事をする仲間」として、ホタテ漁師やカニ漁師、産地の水産会社社員等、多くの人間が参加した。


2.漁業者の本当の主張は何?

新聞記事では「漁獲枠の拡大」や「休業の補償」といったもののみが取り上げられているが、それは彼らの本当の主張とは異なったものである。
実際には「巻網漁優遇の漁獲枠の見直し」や「産卵期における巻網漁の休漁」といったものが一番の主張であった。それらが認められない場合には「休業の補償」が欲しい。
決して闇雲に「枠を増やせ!金よこせ!」と言っているわけではなかったのだ。
しかしながら、どの新聞社でも巻網に関しては触れられていない。産卵期の休漁に関しても毎日新聞の記事ではプラカードの写真がデカデカと写っているにも関わらず記事では触れられていない。
なぜ巻網や産卵期に関する報道はされないのか…不思議である。


3.巻網漁って何?

さて、先ほど名前が出てきた「巻網漁」それはいったいどのようなものなのであろうか?
巻網漁とはわかりやすく言ってしまえば、「船で大きな網を動かして、魚の群れを丸ごと獲る」ものである。詳しく知りたい人はグーグル先生に質問してみて欲しい。
そのため一回あたりの漁獲量は釣りや延縄とは比較にならないものである。
沿岸漁業者が一年かかっても獲れないような量を、巻網ならばその気になれば一日で漁獲できる。
巻網漁というのはそれだけ大規模な漁業なのだ。
そして、漁自体が大規模ということは自ずと会社の規模もでかくなる。
代表的な水揚げ基地である境港で巻網漁を行う会社は、大手水産会社の子会社であることが多い。(冷凍食品やサプリメントでみなさんご存知の会社です)
また、クロマグロの巻網漁の最盛期は5~6月である。
これはクロマグロの産卵期と被り、抱卵した個体が多く漁獲される。


4.漁獲枠の配分ってどうなってるの?

ここまでで理解していただけたと思うが、ザックリと言ってしまえば構図は「中小企業vs大企業」なのである。
さて、これらを踏まえた上で漁獲枠の配分を見ていこう。

30kg以上の大型魚で沿岸漁業733トンに対し、巻網3063トン。
30kg未満の小型魚で沿岸漁業1317トンに対して、巻網1500トン。

このように巻網優遇と言ってもいい配分である。
TAC制度の適応もあり、超過すれば罰則がある。非常に厳しい規制である。
この数値は5月末に農林水産省より各漁協へ一方的に通知された。
何の説明もなくこの内容である。漁業者が不満を感じるのも納得である。
農林水産省によれば、過去の実績より算出した数値とのことだが、本当にこれで資源管理ができるのであろうか?


5.持続可能な漁業とは?

まずは「乱獲」の定義を説明したい。
「乱獲」とは、漁獲圧を強めても漁獲量が増えなくなった状態のことを指す。
つまり、個体数が減ってしまっているために圧力を強めても以前のように量が獲れなくなるのである。
太平洋におけるクロマグロは、近年この「乱獲」の状態にある。

海洋資源は有限である。そして、魚は生物である。
当然のことながら親が子を生み、それが育って親となり、また子供を生む。人間と同じサイクルが魚にも存在する。
新しく加入する資源以上に魚を獲ってしまえば、個体数が減るのは当たり前のことなのだ。
ならば、どうすればいいか?
単純である、加入数が増えるように適正な規制をすればいいのだ。
抱卵した親魚は獲らない、卵を産む前の未成魚は獲らない、そういったことを続ければ魚は自ずと増えていく。

沿岸漁業者は以前から産卵期の休漁等、持続可能な漁業を意識した活動を続けてきた。
それ以前に彼らの規模では、資源に深刻なダメージを与えるような漁獲は不可能なのである。
何が乱獲の原因となっているのか、ここまでの文章を読んでいただけたのなら理解していただけただろう。

農林水産省は「親魚の漁獲と個体数との因果関係は科学的に証明されていない」としているが、普通に考えれば因果関係が無いわけがない。親がいなければ、子が生まれるはずはないのである。そもそもそう主張するにあたってデータが提示されていない。ただのブラフであると考えられる。
科学的に持続可能な漁業の条件等は様々証明されているが、長くなるのでここでは割愛させていただきます。



6.鮪漁師って儲かるの?

「いままでと違って贅沢三昧できないだけでしょ?」という意見をネットで見かけたが本当にそうなのだろうか?
クロマグロというととても高級なイメージがあるかもしれないが、みんながみんな高級なわけではない。
確かに中には一本の鮪で一年分稼ぐ人間もいるが、それは一握りなのである。
世間では築地の初競りのイメージが強いかもしれないが、実際は中央卸売市場での、卸売価格の年間平均はキロあたり2500円ほどだろう。
仮に漁師さんが100kgの鮪を釣ったとしよう。卸売価格で一本あたり250000円である。
水揚げした漁協に販売委託していた場合は、そこから卸売業者の販売手数料、漁協の販売手数料、市場までの運賃、燃料費、仕掛け代、乗組員の人件費等々…いろいろなものが引かれることになる。
場所によって異なるが、この魚の場合販売手数料約キロ当たり500円、運送費でキロ当たり300~800円ほどはかかってくる。
つまり約150000円から運用コストや人件費を引いた額が事業者である船主(漁師)の取り分となるわけだ。
仮に100キロの魚を釣ったとして漁師の手元に残る額の平均は10万円に満たないであろう。

ここで規制について思い出してほしい。
大型魚の沿岸での漁獲枠は733トンである。これを海がある39都道府県で単純に割ると約18.7トンとなる。(実際の配分とは異なります)
18.7トン、つまり100キロの魚であればたったの187本である。それをその県にいる漁師全体で分け合わなければならないのである。
もし100人の鮪漁師がいた場合は一人当たり1.87本、確かにこれでは生活できるわけもない。
「他の漁をすればいい」という意見もあるかもしれないが、そもそも漁をするには仕掛けや餌など相応のコストがかかる。ある程度の数を釣らないと赤字なのだ。
さらに漁協としても水揚げが減れば販売手数料が減ることになり収益は悪化する。
小型の鮪の枠もあるが、それらは大型の魚に比べてキロ単価で劣る。
今回の規制は漁師と漁協、そしてそれらと関わりのある地方自治体、いわゆる「浜」そのものに打撃を与えかねないものなのである。


7.僕たちになにができるのか?

常日頃、漁業に関係のない人間である僕たちにできることはあまりにも少ない。
しかしながらこういった実態を知っているということが重要であると僕は思う。
今回の規制に関しても農林水産省の主張には矛盾が多くあった。それらは知識がないと気付くことさえできないものであった。
今はとにかく多くの人にこの問題の本質を知ってほしい。
四方を海に囲まれ古くから海洋資源に支えられて生きてきた日本国民として、資源管理のあり方について今一度考えていただきたい。
専門的な部分や細かい数値等はかなり省いて記事にしたが、多くの人に見ていただきたかったので今回はこういった内容でご容赦ください。


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コメント

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No title

どうもです。
すんさんの怒りが伝わってくる良い記事だと思います。マグロ自体ある意味日本酒に欠かせない肴の一つですし、十分関係あることだと思いますしね。

しかし何ともやるせない話ですね… 本来マスコミは既得権益の糾弾役を担わないといけないはずなんですが… 
ネットですと単に「漁獲枠」と検索するだけで問題提起記事が出てきますし、情報を得ること自体は難しくないのですが、興味がないとなかなか知られない話ですしね。

でも、この記事のような草の根の活動はきっと意味があると思います。手遅れにならないうちに、なんとか状況が改善されることを願っております。

Re: No title

まるめちさん
どうもです!コメントありがとうございます。
本来のブログの趣旨からは大きく離れた内容でしたが、読んでいただけて嬉しいです。

政治関連でもそうですが、現代のマスコミは「報道しない自由」を振りかざしすぎていると思います。食に関わる問題なのですから、本来であれば詳細な報道がされるべき事案です。
ネット記事においては海洋大の勝川准教授の記事が比較的深く切り込まれていますが、まるめちさんの仰るとおり興味のある層意外は目にすることはないものでしょう。
今回こうして文章にしてみて感じましたが、文字媒体で小難しい情報を伝えるというのは非常に難易度が高いです。
僕もかなり端折った内容になってしまいましたし、前述の勝川氏の記事にしても内容的には不十分なものでした。
こういった内容こそ、映像媒体でわかりやすく報道してもらいたいものです。

今回、記事にするかはかなり悩んだのですが、酒飲みの方は魚をつまみに酒を飲むことも多いですし、そういった方々にこそ知ってほしいと思い記事にしました。
ですが、まるめちさんにそういっていただけると無駄じゃなかったなと思えますね。
読んでいただいて本当にありがとうございます。

No title

おっ熱く書かれていますね。
この話はここだけで収まらず多くの方に知って頂きたい内容ですが、
私には拡散する力が無く何とも歯がゆいですね。
一度は海に関わった身ですので何か出来ない物かと思案するばかりです。

Re: No title

佐藤清人さん
コメントありがとうございます!
本筋とは全く関係ない記事ですが読んでいただけて嬉しいです。

この問題に関して具体的に何かできることはないのかと僕も考えてはいるのですが、なかなか思い浮かばないものです。
僕自身は立場的に一般の方よりもずっと関わりが深いはずなのですけどね…
とにかく、まずは問題の周知から!今は一人でも多くの方に知ってほしいです。

すん

20代後半のオタク会社員。

好きなお酒は花陽浴や正雪など・・・
好きなアニメはラブライブ!や機動戦艦ナデシコなど・・・